新潟地方裁判所 昭和27年(行モ)10号 決定 1952年12月25日
申立人 新潟県地方労働委員会
被申立人 北陸金網工業株式会社
主文
被申立人は、原告被申立人、被告申立人間の当庁昭和二七年(行)第二七号行政処分取消請求事件の判決確定に至るまで、申立人が昭和二十七年十月七日被申立人に交付した同月三日付命令のうち、解雇取消命令を除く部分について、申立人の右命令に従うことを命ずる。
申立人のその余の申立はこれを却下する。
申立費用は被申立人の負担とする。
理由
一、不当労働行為に対する労働委員会の準司法的機能と労働組合法第二十七条第七項の決定の性質から見て同法第二十七条第四項の救済命令の当否、とりわけ該命令の基礎たる事実認定の適法性を判断するには、例えば民事訴訟法上の仮処分におけると同様に裁判所においてはじめからすべての資料に直接あたる必要はないのであつて、労働委員会の調査と審問手続の記録にあらわれた資料によつて、特に職権により調査する必要が認められない限り、該命令の主文が一応理由づけられる程度の疎明があれば足りるものと考える。
申立人提出の疎明資料によれば、申立人がその調査と審問手続に基き本件救済命令(昭和二七年新労委(不)第三号事件)を発するにあたり被申立人が昭和二十七年八月十九日附野崎権三郎、池春吉、佐藤庄治に対してなした解雇が不当労働行為であると認定したことは一応相当と認められ、特に職権をもつて調査する必要は認められない。
二、次に申立人の発した命令の内容をみるのに、申立人が被申立人に対して前記野崎、池、佐藤に対する解雇の意思表示を取消すべき旨命じた部分を除き、その他の部分は相当と認められる。(この点について被申立人は最近前記池を日給二百六十円、同佐藤を日給二百四十円でそれぞれ雇入れていると主張しかかる臨時雇入の事実は一応認められるが、解雇当時の地位に同人等を復せしめたものとは到底認め難い。)しかし右解雇取消を命じた部分は、その余の命令によつて労働者の経済的保護並びに団結権の保護に欠くるところがないものと認められるし、かかる解雇の意思表示の撤回を前記判決確定前に強制することは適当でないから、右解雇取消を命じた部分について同法同条第七項のいわゆる緊急命令を発することは相当でないと認める。
よつて申立費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十二条第九十五条を適用して主文の通り決定する。
(裁判官 緒方節郎)
〔参考資料〕
救済命令 主文
一、被申立人野崎権三郎、池春吉、佐藤庄治に対する昭和二十七年八月十九日附の解雇を取消し解雇当時の原職に復帰させると共に解雇後原職復帰に至るまで原職にあつたと同様の給与を支払わねばならない。
なお右原職復帰の取扱い並に給与額の算定については申立人等が復帰する職場の他の従業員との間に差別があつてはならない。
二、被申立人会社は申立人労働組合に対し
「会社は今後組合の運営に対し支配介入致しません。
右誓約致します。
年 月 日(呈示の日附を記載すること)
北陸金網工業株式会社
取締役社長 吉岡修治<印>
との旨を半紙判に墨書して手交しなければならない。
三、前二項は本命令交付の日より一週間以内に履行しなければならない。